http://blogos.com/article/129608/
https://www.washingtonpost.com/world/national-security/faa-records-detail-hundreds-of-close-calls-between-airplanes-and-drones/2015/08/20/5ef812ae-4737-11e5-846d-02792f854297_story.html
8月21日付け、ワシントンポストの一面です。題字下のトップ記事「自分勝手なドローン(rogue drone)が米国の航空域を塞いでいる」は、米連邦航空局(FAA)の内部報告書をすっぱ抜いた堂々たるスクープ記事です。
その内部報告書を元に、ワシントンポストが作成したグラフィックがこれ。全米で、民間航空機、軍用機とドローンとの接近遭遇(ニアミス)が頻発しているという戦慄の事実が迫ります。
とりわけ事件が頻発したのは今月16日の日曜日でした。午前8時51分、白いドローンがロサンゼル国際空港に着陸寸前のJetBlue機の左翼に現れて、パイロットを驚かせます。その5時間後、Allegiant航空が、同じ滑走路に近づいたときに4枚バネのドローンが機体の下を通り抜けました。
ドローンの飛行が厳しく制限されている首都ワシントンD.C.では、セスナ機が、上空の1,500フィート(約450m)付近を飛んでいるドローンを発見し、用心のために米軍機がスクランブル発進しました。
ケンタッキー州ルイビルでは銀色と白色のドローンが訓練飛行中の飛行機に衝突しそうになり、シカゴではユナイテッド航空機が3,500フィート(1,066m)の高度でドローンが通り過ぎたと報告しました。
そんなこんなでこの日は、全米で12の出来事が記録されました。(その全ては上のグラフィク左下のボタン操作で8月16日を選べは分かります)
昨年以前は、こうしたドローンと航空機のニアミスの報告は殆どありませんでした。しかし、急に盛り上がったブームで、規制のない小型ドローンが米国の空にひしめいていて、間一髪の報告が急増しているとのことです。
ところが、FAAは、今年のこうした事件が、いつ、どこで起きたかの詳細は秘密にし、通常は公文書である報告書の公開を拒み、その一方で、「間一髪」の事件がいつ、どこで起きたかだけを目立たたせようとしていた、ということです。
が、ワシントンポストは、数百ページに及ぶ「rogue-drone reports(自分勝手なドローン報告書」を入手するのに成功しました。入手先は、このようなFAAの秘密主義に反対する政府職員からだ、と堂々と書いています。FAAはこの報告書へのコメントを拒否しているそうですが、否定はしてないのですから、本物です。
ワシントンポストの長大な記事は、報告書にあるいろんなケースに言及していますが、そのうちのいくつかを紹介します。
・3月29日、フロリダのWest Palm Beachにあるゴルフ場近くでドローンがホバリングしていて、大統領警護のシークレットサービス(SS)が色めき立ちました。オバマ大統領がゴルフをしていたからです。SSは詳細については語りませんが、そうした状況に対処する手続き、プロトコルがあるそうです。
・2週間後の4月13日の正午過ぎ、白いドローンがホワイトハウス近くを飛行中との報告があり、米軍機がスクランブル発進しました。ドローンはワシントンDCを流れる小川沿いのモールをこえてアーリントン方向に消えたとか。
このふたつの出来事は、1月に広く報じられ、当ブログでも取り上げたホワイトハウス中庭へのドローン墜落事件があっただけに、当局者も神経質になっていることを表しているようです。
・7月31日付けの、国家安全保障省の発表によれば、「2012年以来、500件以上も、許可を受けていないドローンが、軍や政府、インフラなどの重要施設上空をウロウロとしていた」とのことです。
・軍用機も同様の目に遭っています。7月10日、空軍のF15のパイロットは、小型ドローンが50フィート(15m)以内まで接近したと報告。2週間後、海軍のT-45がアリゾナを飛行中、100フィート(30m)下をドローンが飛んでいたと報告しました。
・従来は考えられない高度でも飛んでいます。5月30日、Caribbean航空とJetBlueの乗組員が別々に「ニューヨークのJFK空港の25マイル南東の上空1万2千フィートで、カラーライトを点けたドローンを見た」と報告してきました。
・まだ衝突事故はありませんが、デルタ航空機からは二つの報告が。3月21日、ニューヨークのラガーディア空港で、左翼50フィートのところをドローンが飛んで行き、2 月24日には、反対方面からボーイング757に向かってきてたった100フィート上を飛び去ったそうです。
・もっと恐ろしいケースも。Wisconsin航空の場合は、5月10日、ノースカロライナ州上空5,000フィートで、ドローンが鼻先を通り過ぎたと報告し、別の同航空機は、その9日後、フィラデルフィアの外れあたりで、10フィート以内をドローンが通り過ぎたとか。
・大型航空機より低いところを飛ぶ小型機には、より脅威が高まります。単発機Piper-28のパイロットは6 月20日、コネチカット州上空でドローンを避けるために、激しい左旋回を強いられたとし、セスナ機からは、8月1日、皿洗い機ほどのドローンが50フィートまで近づいたと、報告しています。
エンジンが鳥を吸い込んで不調になった、という話はよく耳にします。それなら、ドローンがエンジンに吸い込まれれば、当然、事故に繋がりかねません。フロントガラスに激突、なんてことも考えたくない事態です。
しかし、Consumer Electronics Association(CEA:全米家電協会)の推定では、人気のドローン、今年は70万台も売れそうだということです。ますますニアミスの危険性は高まります。(ロイターの記事では、CEAは、ロイターに対し、今年は100万台以上売れると述べ、これは去年の倍、一昨年の7倍だとしています)
どう解決するのか。先のJFK、ラガーディアという巨大空港を抱えるニューヨーク州選出のチャールズ・シューマー(Charles Schumer)上院議員(民主)は、「衝突が起きるのは時間の問題だ」とし、上空500フィート以上や、空港や重要な空域での飛行を阻止するテクノロジー(geo-fencingというようです)の搭載を製造会社に義務付ける法律を導入する考えだそうです。
首相官邸にドローンが落下して、2週間も気づかれなかった今年4月の騒ぎ、なんだか、平和ボケニッポンの遠い昔の夢幻のようでもありますが、大丈夫かニッポン?
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