http://gigazine.net/news/20160721-deepmind-reduce-google-data-center-energy/
人工知能開発を行うスタートアップだった「DeepMind」は、Googleに買収された後もイギリス・ロンドンに拠点を置きつつ独自に人工知脳研究を続けています。DeepMindが開発する人工知能技術は、自己学習してゲームが上達するアルゴリズム「DQN」や囲碁の世界チャンピオンを打ち破るソフトウェア「AlphaGo」などのように時折発表されるとその度に世間を騒がせるのですが、Googleのデータセンターのエネルギー削減にも大きな威力を発揮していることが明らかになりました。
Google DeepMind
https://deepmind.com/blog
Google検索、Gmail、YouTubeなどのGoogleのさまざまなサービスを支えているのが、Googleが世界各地に持つデータセンターです。このデータセンターを効率的にすることは、Googleのサービス品質の向上につながることから、Googleはデータセンターをシステムレベルで絶えず更新し続けています。例えば、データセンターで使用するサーバーを高効率の物に置き換えたり、再生可能エネルギーで電力をまかなう取り組みが行われているとのこと。
中でもデータセンターの品質を語る上で「冷却効率」は非常に重要です。大量の熱を発生させるデータセンターを適切に冷却することはデータセンターの安定的な稼働に不可欠だからです。そして、データセンターの冷却に必要なエネルギーは、データセンターで使用されるエネルギーの大部分を占めており、冷却用のエネルギーを削減することは、環境負荷を下げることにつながります。そのためGoogleは、冷却効率を高めてエネルギーを削減することに長年取り組んでいます。なお、クラウドサービスなどでGoogleデータセンターを利用する企業にとっても、Googleのデータセンターのエネルギー削減が実現すれば、間接的な地球環境保護に役立つため、Googleはエネルギー削減に注力しているそうです。
しかし、データセンターの冷却システムは、データセンターを構成する機器があまりに複雑で非線形的に相互に影響を与えることから、机上の理論や人間の直感などを適用することが難しいという特性があります。さらに、世界中の各データセンターは環境やアーキテクチャが独自であるため、あるデータセンターに最適化された冷却モデルを他のデータセンターに適用できないという難しさもあるとのこと。そのため、データセンターの冷却システムの効率化は、ごく一般的なレベルでのフレームワークを構築するのにとどまっており、データセンターの冷却システム全体を効率化することは困難な作業と言えます。
そんなデータセンターの冷却効率化を進めるために、Googleは2年前から機械学習を取り入れてきたとのこと。機械学習によってデータセンターの使用状況を予測するモデルを立てることで、効率性を高めようというわけです。
このGoogleのデータセンターの冷却システムの効率化プロジェクトに、人工知能の専門チームであるDeepMindが数カ月間参加して、データセンターチームで働いたとのこと。DeepMindチームは、すでに数千人の技術者によって収集されていたデータセンターの気温、電力、冷却ポンプ内のクーラントの流速などのデータを多層のニューラルネットワークに落とし込むディープラーニングによって解析して、効率を高めるフレームワークを作成しました。その結果、冷却システムの消費電力をコンスタントに40%削減することに成功したとのこと。これはエネルギー指標のPower Usage Effectiveness(PUE)では15%の改善に相当します。
電力使用効率のグラフでは、ML(machine learning:機械学習)をONにした状態では、電力使用効率が格段に下がっているのが確認できます。
Googleのデータセンターチームが2年間かけて機械学習によってコツコツ高めてきた冷却効率を、わずか数カ月で4割も削減するというとんでもない仕事をやってのけたDeepMindですが、複雑な変化の中から最適な条件を探し出す機械学習の手法は汎用性を持っているため、今後、数カ月かけて発電設備の効率化、半導体部分のエネルギーの削減、水使用量の削減、スループットの向上など、データセンターの別の部分の効率化に取り組む予定だそうです。