サイト「グーグル」より
 米アルファベット傘下のグーグルが11月9日、最新の人工知能(AI)ソフトである「テンソルフロー(TensorFlow)」を無償公開すると発表した。本ソフトは、音声検索や画像認識など同社のサービスで幅広く使われている重要資産のひとつであるが、グーグルは今回あえて無償公開に踏み切る経営判断を下した。
 グーグルは現在、AIの要素技術である深層学習(Deep Learning)や機械学習(Machine Learning)の分野で先頭を走る。今年の5月には、深層学習システムを搭載したGoogleフォトをリリースした。スマートフォン(スマホ)やタブレットなどのデジタル機器に保存された写真データを分類し、合成写真まで作成してくれるこのアプリは、世界初のサービスである。
 こうした処理を可能にする技術こそがまさに深層学習で、写真の仕分けや連続写真を合成するスピードは、ヒトの数百万倍以上ともいわれている。
 そもそも深層学習とは、多くの階層にわたり情報抽出を行うことで、高い抽象化を実現できる機械学習のひとつであるが、数多くの実験や調整が必要とされる。そのため、深層学習システムでは、タスクごとに実行可能な構造をつくりながら、大容量のデータを伴う訓練が必要となる。
 当然ながら、こうした一連の作業を遂行するには、専門知識をもった情報処理力に優れたエンジニアが必要とされる。グーグルは、今回テンソルフローを無償公開することで、本ソフトの完成度を高めていく意向である。
 それはまさに、高度な情報処理力を伴った研究者や、新たな応用分野を切り開くことができるエンジニアなど多くの優秀な人材を呼び込みながら、製品やサービスを改善・改良していくオープンイノベーションのアプローチに等しい。
 検索エンジンやアンドロイドなど、グーグルのこれまでのサービス開発の進め方でもわかるように、グーグルのイノベーション展開は「世に出してから手直しする」というアプローチを採る。グーグルにしてみれば、漸進的な改良や改善を意味する連続的イノベーションは、画期的な革新である非連続的イノベーションに劣らず、極めて重要なプロセスというわけである。
 テンソルフローは、まさにスタートラインに立ったばかりである。無償公開により、今後、大量データによる実験や調整が施され、改良や改善が図られながら適用範囲が拡大されることで、その完成度は高まるだろう。
 グーグルとしては、本ソフトをグローバルレベルで普及させ、AIの分野でも主導権を維持していく狙いである。
(文=雨宮寛二/世界平和研究所主任研究員)